Google Cloudには初回90日間の無料トライアルとは別に、いつでも使える「無料枠」があります。一定の範囲内で使用する分は無料になるのですが、その条件は単純明快…というわけでもないので「本当に課金されない?」と躊躇するかもしれません。
今回は実際に無料枠を試して「こういう設定で使用したら本当に課金されなかった」という確認結果を紹介します。また、デフォルトの設定だと無料枠の対象外になる部分もあるので、併せて紹介します。
無料枠とは
Google Cloudを新規で利用する場合、最初の90日間は無料トライアル期間として、一定の使用量($300相当、例外を除く)を超えない限りは無料になります。
この無料トライアルとは別に「無料枠」というものがあります。これは「ちょっと使うくらいなら課金しませんよ」というような枠で、プロダクト・サービス毎にその範囲が決められています。期間の定めはないため、無料トライアル期間が終わってからも永続的に利用できます。
例えば、Compute Engine (GCE)であれば、特定リージョンかつ最小限の構成(後述)のVMであれば無料になります。もっとも、Googleとしても全部無料で使われたら商売にならないので、無料枠だけで使える用途は限定的な範囲にとどまります。また、無料枠が存在しないプロダクトもあります(Cloud SQLなど)。
無料枠の詳細は、以下の公式ページに記載があります。
設定手順
筆者の環境において、無料トライアル期間が終了した後、実際にいくつかのプロダクト・サービスを無料枠の範囲で使用してみました。
試したプロダクトの設定手順と発生料金について、以下に紹介していきます。
Compute Engine(GCE)
公式ドキュメントによると、Compute Engine (GCE) の無料枠は以下のように記載されています(2023/02/23時点)。
これに従って、次の手順でVMインスタンスを作ります。一部、注意点があるのでそれも解説します。ここではCloud Console(GUI)で作成します。
- step1VMインスタンス作成画面を開く
Cloud Consoleを開き、メニューから[Compute Engine]>[VMインスタンス]を選択します。
その後、下の「インスタンスを作成」をクリックします。
- step2リージョンを選択
リージョンは無料枠の対象(米国)から選びます。ここでは、選べる中では日本から距離が近い「us-west1(オレゴン)」を選択します。ゾーンはどれでもOKです。
- step3マシンタイプを選択
マシンタイプは無料枠の対象のものを選択します。2023年2月時点では「e2-micro」なので下のように選択します。
- step4ブートディスクを編集
ブートディスクのタイプを変更するために、下の「変更」ボタンをクリックします。
- step5ディスクタイプとサイズを編集(重要)
下のように、ブートディスクの種類を「標準永続ディスク」に変更します(①)。デフォルトでは「バランス永続ディスク」になっていますが、これは無料枠の対象でないため課金されてしまいます。サイズは無料枠の対象である「30GB」以下の数値を入力します(②)。
OSは、ここでは「Debian GNU/Linux 11」としていますが、用途に応じてUbuntuやCentOSなどに変えてもOKです。ただし、無料枠対象外のOS(下記)もあるので注意が必要です。
- step6確定する
ここでは上記以外はデフォルトのままとし、「作成」ボタンで確定します。
ちなみに、画面右側の「月間予測」には$7.31と表示されており、無料枠が適用されていないように見えます(2023年2月時点)。しかし、後述の通り実際に課金されていなかったので、表示上の問題(無料枠の計算が適用されていない)だけのようです。
上記の設定で作成したVMインスタンスを起動し、1週間程度停止せず稼働したまままにしたところでは、料金は発生しませんでした(料金の確認方法などは後述)。
その他、無料枠で使う上での注意点を以下に3点ほど挙げておきます。
Cloud Storage(GCS)
Cloud Storage(GCS)の無料枠の条件については、公式ドキュメントに以下の記載があります(2023年2月時点)。
これに沿って、以下の手順でGCSバケットを作ります。こちらもCloud Console(GUI)で作成します。
- step1バケットの作成画面を開く
Cloud Consoleで、メニューから [Cloud Storage] > [バケット] を選択し、「作成」ボタンをクリックします。
- step2バケットの名前を指定
バケット名を入力し、「続行」をクリックします。画面にある注意書きの通り、他の人が使っているバケット名と被らない名前にします。
- step3リージョンを選択
ロケーションタイプは無料枠の条件である「Region」を選択します(①)。その下のリージョンでは、米国リージョンを選択します。ここでは「us-west1(オレゴン)」を選択します(②)。その後「続行」をクリックします(③)。
- step4ストレージクラスを指定
ストレージクラスは、デフォルトの「Standard」として「続行」をクリックします。通常はアクセス頻度に応じた最安のクラスを選択しますが、無料枠の範囲で使うには「Standard」を選択する必要があるようです(本記事コメント欄でご指摘いただきました)。
- step5公開アクセスを設定
アクセス制御の方法、データの公開範囲はデフォルトのままとして「続行」をクリックします。
- step6データの保護オプションを指定
バージョニングや保持ポリシーの指定は、ここではデフォルトの「なし」のままとして「作成」をクリックします。
このとき、画面右側の「ロケーションの料金」には$0.020/GB/月と表示されており、無料枠が適用されていないように見えます(2023年2月時点)。これは前述のGCEと同様、表示上の問題(無料枠の計算が適用されていない)だけのようです。
- step7公開アクセスの設定確認
下のように公開アクセスの設定の確認が求められます。ここでは禁止になっていることを確認して「確認」をクリックして、バケットの作成は完了です。
上記の設定で作成したバケットに、無料枠の範囲でファイルの出し入れをしてみました。具体的には、合計約4.5GBのファイルをアップロードし、1MB程度のファイルを10回ほどダウンロードしました。データはバケットに置いたまま、数日経ってから料金を確認したところ、課金はされていませんでした(料金の確認方法などは後述)。
その他、GCSを無料枠の範囲で使う上での注意点を以下にあげておきます。
Cloud Run
Cloud Runの無料枠の条件については、公式ドキュメントに以下の記載があります(2023年2月時点)。
こちらはオマケ程度の紹介になりますが、Cloud Runで出来合いのサンプル用コンテナ(hello)をデプロイして、数回アクセスしました。手順は「Google Cloud Japan」様による下記ブログ記事の通りです。
無料枠の200万リクエストに遠く及ばず、数リクエスト程度のみ試した程度ですが、数日たっても課金はされていませんでした。
発生料金の確認
前項の手順でリソースを構成し、1週間程度経ったところで料金を確認しました。その方法を以下に紹介します。
Cloud Consoleメニューから[Cloudの概要]>[ダッシュボード]を開き、下図の赤枠部分を確認します。
①の部分に現時点の料金が表示されます。マイナス(-JPY¥4.67)になっているのが不気味ですが、無料枠の計算過程での誤差と思われます。これを0円とみなし、課金はされていないことが分かります。
誤って無料枠対象外のリソースを使ってしまうと、ここがプラスの料金になるはずです。こまめに確認することで、想定外の課金を防ぎやすくなります。
②「請求の詳細を表示」をクリックすると下の画面に移り、どのプロダクトにいくら料金が発生しているかなど、詳細を確認することができます。GCEインスタンスの使用分などが課金されると同時に、ほぼ同額(以上)が「free tier discount」として割り引かれているのが分かります。日付がずれているのは時差の関係と思われます。
結論として、前項で設定したリソースは、確かに無料で使えていることが分かりました。
想定外の課金の予防
前項では一部のプロダクトを無料で使う方法を紹介しました。それ以外のプロダクトや異なる構成にする際に、想定外の課金をなるべく防ぐために、料金アラートや料金計算ツールが有効です。以下に紹介していきます。
料金アラート設定
利用料金が一定のラインに達したときにメールで通知することができます。例えば500円に設定しておくと、500円に達した段階(およびその手前のいくつかの段階)でメール通知がされます。
想定しない料金発生があったとき、なるべく早く気付けるようにアラートを設定してみます。以下はその例です。
- step1予算の作成画面を開く
Cloud Console の検索ボックスで「予算」と検索するなどして、「予算とアラート」画面を開きます。そして、下の赤枠部分の「予算を作成」をクリックします。
- step2名前を設定
予算(アラート)を識別する名前を設定します。ここでは「予算1」として「次へ」をクリックします。
- step3目標金額を設定
アラートを発する金額(月額)を任意で指定します。ここでは「¥500」として「次へ」をクリックします。
- step4しきい値を設定
予算に対してアラートを発する段階的なしきい値を設定します。デフォルトでは、予算の50%、90%、100%に達した段階でそれぞれアラートを発する設定になります。ここではそのままとして「終了」をクリックします。
- step5設定した予算を確認
下のように予算が追加されていることを確認して、アラート設定は完了です。
料金計算ツール
「どういう設定でどのくらい使うと、いくらかかるのか」というのは、下記URLのGoogle Cloud 料金計算ツールでシミュレーションが可能です。
ただし、2023年2月時点では英語のみとなっており、わりと玄人チックな画面構成なので、初めてGoogle Cloudを扱う方にとっては使いづらいかもしれません。
下の画像は、Compute Engine(GCE)の計算例です。無料枠の設定で構成した場合、計算結果が$0になっていることが確認できます。
参考URL
おわりに
今回の記事は以上です。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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コメント
https://cloud.google.com/free?hl=ja
や
https://cloud.google.com/storage/pricing?hl=ja#cloud-storage-always-free
を見ると、Cloud Storageの5GBの無料枠が適用されるのはStandard Storageだけのように思われます(この記事で引用されているページには現在でもStandardとは明記されていませんが、その理由は不明です)。
ご指摘ありがとうございます。そうなのですね、ご提示いただいたページを見て知りました。
記事内の説明を修正させていただきました。