Windows標準機能のWSL(WSL2)を使うと、Linux環境を扱うことができます。2022年8月時点で最近のOSバージョンであれば、「wsl --install
」コマンドだけでWSL2のインストールが可能で、簡単に使い始めることができます。
本記事では、WSL2のインストール手順や、起動・終了方法、WindowsとLinux間のファイルのやり取りなど、基本的な使い方について解説します。
WSLとは?
WSL(Windows Subsystem for Linux)とは、Windows内でLinux環境を使うことができるOS標準の機能です。
下の画面はWSL(WSL2)を使い、Windows11でLinux環境(Ubuntu)を操作している例です。
このLinux環境は基本的に、Windowsとは独立して動作します。それでいながら、双方のファイルのやりとりは簡単に行えます。
WindowsでLinux環境を使うシーンとして、次のものが挙げられます。
- Linux環境でしか動作しないツールを使用する(例:Ansible など)
- 開発したアプリケーションをLinux上でテスト・デバッグする
- Linuxの使い方を学ぶ など
WSLには、現時点で「WSL2」と「WSL1」の2つのバージョンがあります。これらの違いは、下記をご覧下さい。ここではWSL2を使うことを前提として解説します。
WSL2を使える環境
WSL2は、次のWindows OSで使用可能です。
上記はWSL2の要件であり、これ以外の環境でもWSL1であれば使える場合があります。
Windows Server は、以前までWSL1しか使用できませんでした。しかしWindows Server 2022の上記のアップデートから、ようやくWSL2が使えるようになったようです。
使用可能なLinuxディストリビューション
WSL2の仕組みとして、Windows内でLinuxの仮想マシンを動作させています。そしてLinuxには、UbuntuやDebianなどの複数のディストリビューションがあります。使用できるディストリビューションは次の通りです。
最初にインストールするときに、ディストリビューションを指定しないと、既定の「Ubuntu」が選ばれます(2022年8月時点)。
WSL2のインストール方法
初めてWSL2を使うときに、Linux環境をセットアップする手順を紹介します。ここでは、既定のディストリビューションであるUbuntuをインストールし、使用する例を見てみましょう。
ここではWindows 11の画面を紹介しますが、Windows 10やWindows Server でも同様です(ただしWSL2を使用可能なバージョンであること)。
- step1プロンプトを「管理者として実行」
Windows 11の場合、下図の手順で「Windows ターミナル(管理者)」を起動します。
Windows 10やWindows Serverの場合、同様の手順で「Windows PowerShell(管理者)」を選択します。
- step2インストールコマンドを実行
プロンプトで次のコマンドを入力し、Enterを押すとインストールが始まります。
wsl --install
このコマンドは、既定のディストリビューションである「Ubuntu」をインストールします(他のディストリビューションを指定する方法は後述)。
インストールは5~15分程度かかるようです。「要求された操作は正常に終了しました」と表示されるまで待ちます。
- step3再起動
インストール完了後、再起動を求められますので、コンピューターを再起動します。
- step4ユーザー名・パスワードを設定
OS再起動後、Linux環境が自動起動し、インストール処理の続きが行われます。しばらくするとユーザー名とパスワードが聞かれるので、これらを設定します。
- step5Linux環境を操作する
この後は、通常のLinuxと同様に操作します。試しに「
lsb_release -a
」コマンドで、Ubuntuのバージョンを確認してみます。あとはLinux環境を任意に操作します。
Linux環境の起動・終了や、Windows環境とのファイルのやり取りについては、次項で解説します。
Linux環境の起動・終了
インストール後は、必要な時にLinux環境を起動して使用することができます。起動や終了は次のように行います。
Linux環境の起動方法
WSL2のLinux環境は、スタートメニューからLinuxディストリビューション名を選択すると、操作用のプロンプトが起動します。
前項の手順でUbuntuをインストールした場合、下のように「Ubuntu on Windows」を選択すればOKです(Windows 11の例)。
開始方法は他にもあります。例えば、Windows ターミナル(またはWindows PowerShell、コマンドプロンプト)で「wsl」コマンドを入力することでも可能です。
Linux環境の終了方法
Linux環境を終了するには、操作中のウィンドウを「×」で閉じればOKです。特にLinuxのシャットダウンコマンド(shutdown -h など)は不要です。終了すると、基本的に作業中の内容は維持されません。
あるいは、「wsl」コマンドでLinux環境を開始した場合は、「exit」コマンドで元のプロンプトに戻ります。
Windowsとファイルをやり取りする方法
WSL2のLinux環境と、ベースのWinodws環境は、互いに独立して動作します。ファイルも、基本的にはそれぞれで独立して保持しています。ただし、双方のファイルのやり取りは簡単にできるようになっています。
Windows環境からLinux環境のファイルにアクセスする場合
下のように、Windows エクスプローラーのツリーで「Linux」を展開すると、Linux環境のファイルにアクセスできます。「Ubuntu」など、インストール済みのディストリビューションごとにフォルダが分かれています。
あるいは、アドレスバーに「\\wsl$」または「\\wsl.localhost」を指定することでも可能です。
ファイルの参照だけでなく、書き込みも可能です。
ちなみに実体の仮想マシンが停止状態(Stopped)の場合でも、自動的に起動されるので、特に意識する必要はありません。
Linux環境からWindows環境のファイルにアクセスする場合
Linux環境からWindowsのCドライブにアクセスする場合は、「/mnt/c」のパスを指定します。Dドライブなら「/mnt/d」のようになります。
こちらも同様に、ファイルの参照だけでなく、書き込みも可能です。
他のディストリビューションを使うには?
前項の例では、規定のディストリビューションであるUbuntuをインストールしましたが、Debianなど他のディストリビューションを指定することもできます。
wsl --install -d <ディストリビューション名>
上のコマンドで、-d オプションの後にインストールしたいディストリビューション名を指定します。このディストリビューション名は、「wsl --list --online
」で確認でき、これで表示されるリストの”NAME”(左側の列)を指定します。Debianの場合は「wsl --install -d Debian
」となります。
上の画像は、既定のUbuntuをインストールした後、Debianをインストールした例です。「wsl -l -v
」で、2つのディストリビューションがインストールされていることが確認できます。
このように、複数のディストリビューションをインストールして使い分けることもできます。Debianを起動するときは、Windows スタートメニューから「Debian …」を選択、Ubuntuを起動するときは同様に「Ubuntu …」を選択すればOKです。
参考リンク
おわりに
今回の記事は以上です。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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