ネットワークティア「プレミアムティア」と「スタンダードティア」の違い(Google Cloud)

Google Cloud
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VMインスタンスの設定画面とかで、

ネットワークサービスティアを選択しろと言われるんだけど、

どっちを選べばいいんだろう?

本記事では、Google Cloudにおける2つのネットワークサービスティア「プレミアムティア」と「スタンダードティア」の違いについて解説します。詳細な解説は下記のGoogle Cloud 公式ドキュメントにありますが、分かりにくいと感じる方も多いと思います。そのため、よりかみ砕いて短い時間でもざっとわかるレベルで解説していきます。

また、料金やスループット・レイテンシを具体的な数字で比較したものも紹介します。

おおまかな違い

プレミアムティアとスタンダードティアの詳細な比較表は、公式ドキュメント「Network Service Tiers の概要 – プレミアム ティアとスタンダード ティアのまとめ」にあります。

これをざっくり要約すると、下のようになると思います。評価は相対的なもので、筆者の主観が入っています。比較項目をクリックすると、それぞれの解説項目に飛びます。

比較項目プレミアムティアスタンダードティア
ネットワーク使用料普通安い
ネットワーク品質
(スループット・レイテンシ)
高い普通
グローバルな可用性を
必要とするサービス用途
適する適さない

ネットワーク使用料

スタンダードティアは、プレミアムティアに比べてネットワーク使用料が安価になります。

下表は両者の料金(月額)を大まかに試算した例です。実際の料金は使用条件によって変わってきますので、あくまで参考としてご覧下さい。

転送量
(月あたり)
プレミアムティア
月額使用料
スタンダードティア
月額使用料
差額
(プレミアム-スタンダード)
1GiB19円15円4円 (21%)
10GiB189円149円40円 (21%)
100GiB1,890円1,485円405円 (21%)
1TiB19,354円15,206円4,148円 (21%)
5TiB96,768円76,032円20,736円 (21%)
50TiB829,440円518,400円311,040円 (38%)
100TiB1,658,880円1,036,800円622,080円 (38%)
200TiB3,317,760円1,935,360円1,382,400円 (42%)
※東京リージョン(asia-northeast1)から、中国とオーストラリアを除く世界中の宛先に対するインターネット下り(外向き)のトラフィックの場合。2023/04/30時点のネットワーク料金(下記)をもとに、1ドル=135円で計算した大まかな月額料金。無料枠は考慮しない。
スタンダードティアは無料枠対象外

スタンダードティアの場合は、無料枠の適用外となります。とはいえ、ネットワーク料金の無料枠は数GB程度ですので、料金に大きなインパクトは無いと言えるでしょう。

参考:Network Service Tiers の料金

料金の詳細は、公式ドキュメント「All networking pricing」(”Internet egress rates”項)に記載があります。以下は、東京リージョンにおける各ティアの料金の抜粋です(2023/04/30時点)。

ネットワーク品質

Googleは、公共のインターネット網よりも高品質なネットワークバックボーンを世界中に展開しています。プレミアムティアの場合、可能な限りこのGoogle ネットワークを使って情報が伝送されます。スタンダードティアの場合はこれと逆で、可能な限り公共のインターネット網が使われます。このため、プレミアムティアの方がスループットやレイテンシに優れます

詳細は公式ドキュメント「Network Service Tiers の概要 – プレミアム ティア」に記載があります。

さて、気になるのは数字上どのくらい違うかです。前述のドキュメントには言及がありませんが、Google Cloud 公式ブログにスループットの比較結果がありましたので以下に紹介します。

Standard Tier(青線)のスループットは平均 3,223 kbps、Premium Tier(緑線)は平均 5,401 kbps で、Premium Tier のスループットが Standard Tier の 1.7 倍弱となっています。

Network Service Tiers をアルファ リリース : クラウド ネットワークの選択が可能に」より引用

測定条件などはリンク切れとなっていて確認できませんでしたが、上記の検証ではプレミアムティアのスループットはスタンダードティアの1.7倍弱という結果になったようです。これはリージョンなどの条件によって変わってくるはずですので、あくまで参考に留めて下さい。

レイテンシ(遅延)については、「Google Cloud Skills Boost」(学習サイト)に各ティアを比較する実験があります。この実験結果の例を以下に紹介します。

上の出力例では、プレミアム ティア VM の平均レイテンシは 123.753 ミリ秒です。
 (中略)
上の出力例では、スタンダード ティア VM の平均レイテンシは 127.986 ミリ秒です。したがって、プレミアム ティア VM の平均レイテンシはスタンダード ティア VM と比較して 5% 低くなります。

Google Cloud Skills Boost 「ネットワーク ティア – ネットワーク コストの最適化」より引用

この実験ではヨーロッパとus-central1リージョン間の平均レイテンシを測定しています。出力例では、プレミアムティアのレイテンシはスタンダードティアと比較して5%低い(速い)としています。これはあくまで出力例であり、こちらもリージョンなどの条件によって変わってくるはずですので、正確な比較には検証が必要です。

グローバルな可用性を必要とするサービス用途

ロードバランサを構成する際にも、ネットワークティアを意識する場面があります。複数のリージョンにまたがる負荷分散(グローバル負荷分散)を行う場合、プレミアムティアが適していると言えます。スタンダードティアで複数リージョンの負荷分散を行う場合、管理が複雑になります。

また、Cloud CDNを使用するにはプレミアムティアが必要です。

詳細は公式ドキュメント「Network Service Tiers の概要 – Network Service Tiers と Google Cloud のリソース」の記述を参考にして下さい。

ティアは変更できるか

一度選択したネットワークサービスティアは、後から変更することができます。ただし、使用できるIPアドレスには制約があるので注意が必要です。

詳細は「Network Service Tiers の概要 – リソースのスタンダード ティアからプレミアム ティアへのアップグレード」などに記載があります。

なお同ドキュメントには、ロードバランサのティアを変更する例があるので、以下に引用します。

既存のロードバランサをプレミアム ティア(デフォルト)からスタンダード ティアに変更するには、次のことを行う必要があります。

  1. 既存のロードバランサの転送ルールを含むリージョン以外にあるバックエンドをすべて削除します。
  2. 既存の転送ルールと IP アドレスを削除してから、スタンダード ティアに既存のターゲット プロキシを参照する新しい転送ルールと IP アドレスを作成します。
Network Service Tiers の概要」より引用

結局どちらを選ぶべきか

前項「ネットワーク使用料の比較」から、データ転送量が少ない場合は使用料の違いは“誤差レベル”と見ることもできるでしょう。「スタンダードティアにしても〇〇円安くなる程度だから、機能の制約が無く品質の高いプレミアムティアを選んでおこう」という判断もありだと思います。

一方でデータ転送量が多くなってくると、使用料の違いが顕著になってきます。グローバル負荷分散やCloud CDNの制約、ネットワーク品質が許容できれば、スタンダードティアは有力な選択肢になります。

なお、自己学習目的の場合は、無料枠が適用されるプレミアムティアの方が適切かもしれません。

公式ドキュメント「Network Service Tiers の概要 – 階層の選択」では、ティアを選択するためのディシジョンツリーがあります。正しく判断するために、こちらも参照してみて下さい。

参考リンク

Network Service Tiers の概要

Google Cloud Platform(GCP)プレミアムティア vs スタンダードティア徹底比較

おわりに

今回の記事は以上です。

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もとだて
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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